DUSt3Rの位置づけ

DUSt3Rは、画像から3D点群を直接推定することで、従来の3D Visionの考え方を大きく変えた研究です。SfMやMVSから、CroCo、MASt3R、VGGTへの研究の流れを整理し、特徴点マッチング、3Dモデル構築、SLAM、差分検知との関係を解説します。

公開日: 更新日: 著者: 鈴木 瑞人

「幾何学を使って段階的に3Dを解く」方法から、「大量の3Dデータで学習したネットワークに幾何そのものを推論させる」方法へ。DUSt3Rが切り拓いた新たな地平を辿ります。

対象読者

  • 複数の画像から点群データを作成したり、3Dモデルを構築したりする技術に興味がある人
  • 2つの画像間の特徴点マッチングや、画像・点群を使った差分検知に興味がある人
  • SfM、MVS、SLAMなどの従来技術と、DUSt3RやVGGTなどの新しい3D Vision技術の関係を理解したい人

要約

  • DUSt3Rは、「幾何学を使って段階的に3Dを解く」方法から、「学習したネットワークに3D幾何を直接推論させる」方法への転換点となった研究です。
  • 最大の特徴は、画像の各画素に対応する3D座標を表す「pointmap」を直接推定することです。これにより、3D再構築、深度推定、画像間マッチング、カメラ姿勢推定などを統一的に扱えるようになりました。
  • DUSt3Rの考え方は、MASt3R、Fast3R、MUSt3R、CUT3R、VGGTなどへ発展し、SLAM、Gaussian Splatting、ロボティクスなどにも応用されています。
  • 一方で、従来のSfMやBundle Adjustmentなどの幾何学的最適化が不要になったわけではありません。学習による3D推定と古典的な幾何学を組み合わせる方向が重要になっています。

1. はじめに:DUSt3Rは何を変えたのか

「DUSt3R: Geometric 3D Vision Made Easy」は、3D Visionの研究史の中で重要な転換点となった論文です。[1]

「幾何学を使って段階的に3Dを解く」方法から、「大量の3Dデータで学習したネットワークに幾何そのものを推論させる」方法への橋渡しに位置します。

従来、複数枚の写真から3Dモデルや点群を構築するには、画像間の特徴点マッチング、カメラ姿勢推定、三角測量など、複数の処理を順番に実行する必要がありました。DUSt3Rは、こうした処理を個別に実行する代わりに、画像から3D空間の座標を直接推定する方法を提案しました。

この発想は、その後の3D再構築、特徴点マッチング、SLAM、3D Gaussian Splattingなどの研究にもつながっています。2026年のサーベイでも、DUSt3Rを起点とする研究群が「feed-forward 3D reconstruction」や「geometric foundation models」という研究領域として整理されています。[2]

この記事では、DUSt3R以前の研究から、その後のMASt3RやVGGTまでの流れを整理し、DUSt3Rが現在の3D Vision技術の中でどのような位置にあるのかを解説します。

2. DUSt3R以前の3D Vision

2.1 古典的な3D再構築のパイプライン

従来、複数枚の写真から3Dを作成するときは、おおむね次のようなパイプラインを使用します。

画像
  ↓
特徴点抽出
  ↓
画像間マッチング
  ↓
Fundamental / Essential matrix
  ↓
カメラ姿勢推定
  ↓
三角測量
  ↓
Bundle Adjustment
  ↓
Multi-View Stereo
  ↓
3D点群

COLMAPは、この系統の代表的な実装です。[3] COLMAPでは、Structure-from-Motion(SfM)によってカメラ姿勢と疎な3D点群を推定し、その後、PatchMatch StereoなどのMulti-View Stereo(MVS)によって密な3D点群を生成します。

この方法は、幾何学的な理論に強く支えられています。代表的な要素として、カメラ内部パラメータ K、カメラ姿勢 R, t、エピポーラ幾何、三角測量、Bundle Adjustmentなどがあり、これらの方法は現在でも非常に重要です。

2.2 古典的な方法の弱点

一方で、古典的なパイプラインには弱点もあります。特に重要なのは、正しい画素対応が取れないと、その後の処理が崩れやすいという点です。

例えば、次のような条件では画像間のマッチングが難しくなります。

  • テクスチャが少ない領域
  • 繰り返し模様
  • 大きな視点変化
  • モーションブラー

特徴点の対応関係を正しく推定できなければ、その後のカメラ姿勢推定や三角測量にも影響します。そこで2010年代後半から、従来のパイプラインの各処理をニューラルネットワークに置き換える研究が進みました。

3. 幾何学的な処理をDeep Learningで置き換える研究

3.1 MVSNet:深度推定の学習

MVSNet(2018)は、Multi-View StereoにDeep Learningを導入した代表的な研究です。[4] MVSNetでは、既知のカメラパラメータを使用しながら、cost volumeを構築し、ニューラルネットワークによって深度を推定します。

ただし、カメラキャリブレーションやカメラ姿勢は入力として必要です。つまり、従来の幾何学的な仕組みを完全になくしたのではなく、その一部をニューラルネットワークに置き換えた方法です。

3.2 SuperGlue / LoFTR:特徴点マッチングの学習

特徴点マッチングの分野でもDeep Learningの導入が進みました。SuperGlue(2020)は、Graph Neural Networkと最適輸送に基づく仕組みを用いて、画像間の特徴点マッチングを学習可能にしました。[5]

LoFTR(2021)は、Transformerのcross-attentionを利用して、画像間の対応関係を推定します。[6] 特にLoFTRでは、従来の特徴点検出が苦手としていた低テクスチャ領域でも、密な対応関係を推定できるようになりました。

この段階の設計思想

古典的な3D再構築パイプラインを残しながら、その構成要素をDeep Learningで強化するという方向です。例えば特徴点マッチングをLoFTRに置き換えても、その後にFundamental Matrixの推定やカメラ姿勢推定を実行するという基本構造は維持されていました。

4. CroCo:画像間の幾何関係をTransformerに学習させる

DUSt3Rを理解するうえで、重要な先行研究がCroCoとCroCo v2です。[7]

CroCoは、「同じシーンを写した別視点の画像」を利用して、隠された画像部分を復元するCross-view Completionという方法で事前学習を行います。これは、画像の一部を隠して復元させる学習を、複数視点の画像に拡張したものです。

CroCo v2では、Transformerを大規模に事前学習することで、ステレオマッチングやOptical Flowに対して高い性能を示しました。従来よく使われていたcost volume、warping、iterative refinementなどを大量に組み合わせなくても、強い性能を得られることを示した点が重要です。

CroCo v2の論文では、こうした方向性を「universal vision model」への一歩と表現しています。ここで重要なのは、Transformerが画像の意味情報だけでなく、異なる視点間の幾何関係まで学習できると分かってきたことです。DUSt3Rは、この発想をさらに進めた研究です。

5. DUSt3Rの本質:Pointmap

5.1 カメラを先に求めるのをやめる

DUSt3Rの最も重要なアイデアは、カメラパラメータを先に推定せず、3D座標を直接推定することです。[1]

従来の方法では、基本的に次の順序で処理します。

correspondence → K, R, t → triangulation → XYZ

画像間の対応関係を求め、カメラの内部パラメータや姿勢を推定し、三角測量によって3D座標を計算します。一方、DUSt3Rでは入力画像 (I1, I2) からTransformerを通して、直接予測されたpointmap (X1, X2) を出力します。

5.2 Pointmapとは何か

通常のdepth mapでは、各画素に対して深度を表す1つの値を推定します((u, v) → z)。一方、pointmapでは、各画素に対して3次元座標を直接推定します((u, v) → (X, Y, Z))。つまり、各画素が3D空間のどこに位置するかを直接表現します。

しかもDUSt3Rでは、2枚の画像について予測された3D点を共通の座標系で表現します。これは大きな変更です。

通常のdepth mapの場合、別々のカメラから得られたdepth mapを統合するには、深度に加えてカメラ内部パラメータやカメラ姿勢が必要になります。

depth map
    +
camera intrinsics
    +
camera pose
    ↓
3D座標への変換・統合

一方、pointmapでは、各画素に対して3D座標が直接与えられます。

画像
  ↓
DUSt3R
  ↓
pointmap
  ↓
3D座標

これにより、3D再構築に必要な情報を、より直接的に得られるようになります。

5.3 複数の3D Visionタスクを統一する

DUSt3Rでは、pointmapを利用することで、従来は別々に扱われていた複数の問題を統一的に扱えます。

  • 3D reconstruction
  • Depth estimation
  • Pixel correspondence
  • Relative camera pose estimation
  • Absolute camera pose estimation
  • Focal length estimation

これらは、従来であれば個別の推定アルゴリズムや処理が必要になることの多い問題です。DUSt3Rでは、pointmapから必要な情報を導出することで、それぞれの問題に対応します。

DUSt3Rの革新性

単にTransformerを利用したことではなく、3D Visionの基本的な出力表現を、camera / depth / matchingから「pointmap」へ変えたことにあります。

6. 研究史におけるDUSt3Rの位置づけ

ここまでの流れを整理すると、次のようになります。

時代 代表的な研究・技術 基本的な考え方
古典 SIFT / SfM / COLMAP / MVS 幾何学を明示的に解く
2018年頃〜 MVSNet 幾何学的パイプラインの一部を学習する
2020〜2021年 SuperGlue / LoFTR 画像間の対応点を学習する
2021〜2023年 DPT / CroCo Transformerで密な幾何情報を学習する
2023〜2024年 DUSt3R pointmapを直接回帰し、複数の幾何タスクを統一する
2024〜2025年 MASt3R / Fast3R / CUT3R / MUSt3R matching、multi-view、streamingへ拡張する
2025〜2026年 VGGTなど 3D geometry自体をfoundation model化する

DPTのような研究によって、Transformerがdense predictionにも有効であることが示されました。[8] さらにCroCoによって、複数視点間の幾何関係をTransformerに学習させられることが分かりました。[7]

その延長上で、DUSt3Rがpointmapという出力表現を導入しました。この流れで考えると、DUSt3Rは単なる深度推定モデルではなく、3D Visionの問題設定そのものを変更した研究として位置づけられます。

7. DUSt3Rの限界:2-viewモデルとGlobal Alignment

DUSt3Rは、完全に一度の推論だけで大量の画像から3Dモデルを作成できるわけではありません。DUSt3Rそのものは、基本的に2-viewモデルです。[1]

例えば、100枚の画像がある場合、それぞれの画像ペアについてpointmapを計算し、それらを後からglobal alignmentによって一つの座標系にまとめます。

画像ペア
    ↓
DUSt3R
    ↓
pairwise pointmaps
    ↓
global alignment
    ↓
統合された3Dシーン

数式で表すと、pairwise DUSt3R → global alignment → scene のようになります。そのため、画像枚数が増えると計算量が問題になります。多数の画像ペアを扱う場合、ペア数が O(N2) 的に増えることも問題になります。このDUSt3Rの弱点を解決する研究が、2024〜2026年の3D Visionの重要な流れの一つになりました。

8. MASt3R:3D推定と特徴点マッチングを統合する

DUSt3Rの直接的な後継研究の一つがMASt3Rです。[9] MASt3Rでは、DUSt3Rのpointmapに加えて、密なlocal featureを出力するheadを追加しています。

DUSt3Rは大きな視点変化に対しても頑健ですが、pixel matchingの精密さという点では、必ずしも最適ではありませんでした。MASt3Rは、この部分を強化する研究です。

DUSt3R = 3D geometry
MASt3R = 3D geometry + high-quality matching

つまり、3Dの幾何情報と画像間の対応関係を、同じネットワークの中で扱う方向へ進みました。画像間の特徴点マッチングに興味がある場合、DUSt3RからMASt3Rへの発展は特に重要です。

9. MASt3R-SLAM / SLAM3R:3D推定をSLAMに利用する

MASt3Rの考え方は、SLAMにも応用されています。

9.1 MASt3R-SLAM

2025年のMASt3R-SLAMは、MASt3Rを3D reconstructionのpriorとして利用する、実時間dense SLAMの研究です。[10] 従来のSLAMでは、特徴点抽出、tracking、camera pose estimationなどを組み合わせて構成することが一般的です。

RGB画像
   ↓
MASt3Rによる3D prior
   ↓
tracking / fusion / loop closure
   ↓
dense SLAM

論文では、約15 FPSのdense monocular SLAMを報告しています。

9.2 SLAM3R

SLAM3Rも同じ方向の研究です。[11] RGB動画からpointmapを直接回帰し、局所的な3D情報を逐次統合することで、20 FPS以上のdense reconstructionを報告しています。

ここでの重要な変化は、次の点です。従来のSLAMでは、画像から特徴点を抽出し、それを使ってカメラの動きを推定する構成が中心でした。一方、DUSt3R系の研究では、画像から一度3Dを予測し、その3D情報を使ってtrackingするという設計が可能になっています。これはDUSt3Rのpointmapという考え方が、実時間の3D認識に応用された例です。

10. Fast3R / MUSt3R:複数画像をまとめて3D化する

DUSt3Rの次の大きな課題は、画像ペアごとの推論とglobal alignmentが必要になることでした。Fast3RやMUSt3Rは、この問題を解決する方向の研究です。

10.1 Fast3R

Fast3Rは、DUSt3Rのmulti-view generalizationとして位置づけられています。[12] 複数の画像をまとめてTransformerに入力し、共通座標系のpointmapを一度のforward passで出力します((I1, I2, …, IN) → (X1, X2, …, XN))。

ペアごとの3D推定と位置合わせという多段階の処理から、複数画像を同時に入力して共通座標系のpointmapを一挙に得る、直接的な再構築へと進化しました。

10.2 MUSt3R

MUSt3Rも、DUSt3Rの著者らによる拡張研究です。[13] pairwise reconstructionとglobal alignmentによる方法から、multi-viewを直接扱う方法へ発展しています。さらにmemory mechanismを利用して、大規模な画像集合やonline処理に対応する方向へ進んでいます。

アプローチの違い

DUSt3R:2枚の画像から3Dを推定し、後から統合します。
Fast3R / MUSt3R:複数枚の画像から、最初から共通座標系の3Dを推定します。

11. CUT3R:3Dの状態を継続的に記憶する

DUSt3Rから発展したもう一つの重要な方向がCUT3Rです。[14] CUT3Rでは、新しいカメラ画像が入力されるたびに、過去の画像から得られた情報を保持する内部状態 Si を逐次更新します。

I₁ → S₁
I₂ + S₁ → S₂
I₃ + S₂ → S₃

各画像のpointmapを共通座標系で出力しながら、継続的に3D情報を更新します。この考え方は、ロボットの3D認識と相性がよいものです。ロボットにとって3D認識は、大量の写真をまとめて一度処理する問題というより、カメラ画像が次々に入力される中で周囲の3D状態を継続的に更新する問題だからです。DUSt3Rのpointmap regressionというアイデアが、CUT3Rではpersistent 3D stateへ発展しています。

12. VGGT:Geometric Foundation Modelへの発展

DUSt3R以降の研究を象徴するモデルの一つが、VGGT(Visual Geometry Grounded Transformer)です。[15] VGGTはMeta / Oxfordによる研究で、CVPR 2025 Best Paperを受賞しました。[16]

VGGTでは、1枚から数百枚の画像を入力すると、Camera intrinsics、Camera extrinsics、Depth maps、Point maps、3D point tracks といった情報を一つのTransformerから直接推定します。

DUSt3Rはpointmapを中心として複数の3D Visionタスクを統一する考え方を示しましたが、VGGTではこれらを包括的に一つのモデルから推定する方向へ進んでいます。

タスクごとに別々の3Dアルゴリズムを組み合わせるのではなく、3D scene geometryを理解する大きなモデルを作ります。

このような種類のモデルは、Geometric Foundation Model(GFM)と呼ばれることも増えています。[2] その意味で、DUSt3RはGeometric Foundation Modelの研究につながる重要な転換点だったと考えられます。

13. 現在の3Dモデル構築技術とのつながり

13.1 Gaussian Splatting / NeRFとの関係

DUSt3R系の研究は、Gaussian SplattingやNeRFなどの3D表現技術にもつながっています。例えば、3D Gaussian Splattingでは、従来COLMAPによるカメラ姿勢推定や点群の初期化がよく使われていました。しかし画像枚数が少ない場合や視点差が大きい場合、COLMAPによる推定が難しくなることがあります。

そこで、DUSt3R、MASt3R、VGGTなどを利用する方向が研究されています。

複数画像
    ↓
DUSt3R / MASt3R / VGGT
    ↓
camera poses + geometry
    ↓
Gaussian Splatting
    ↓
3Dモデル

例えば、VGGTの公式実装には、予測結果をCOLMAP形式で出力し、gsplatなどのGaussian Splattingライブラリへ渡す機能があります。[17] また、InstantSplatは、DUSt3R / MASt3R系の幾何priorを利用し、pose-free / sparse-viewのGaussian Splattingを行う代表的な研究です。[18] これは、DUSt3R系のモデルが実際の3Dモデル構築ワークフローに組み込まれている具体例です。

13.2 点群生成と特徴点マッチングへの意味

画像から点群を生成する場合、DUSt3Rのpointmapは、各画素に対応する3D座標を直接得られるという点で重要です。また、特徴点マッチングでは、MASt3Rのように3D幾何情報とdenseな画像特徴を組み合わせる方向が発展しています。

これらの技術は、画像からの3Dモデル構築だけでなく、異なる画像間の対応関係を調べる処理にも関係しています。画像間の差分検知を考える場合も、視点が異なる画像を比較するには、まず画像間の対応関係や幾何学的な位置合わせを考慮する必要があります。DUSt3RやMASt3Rのような技術は、こうした比較のための3D情報や画像間対応を得る手段として関連しています。ただし、DUSt3R自体が差分検知を直接行うモデルというわけではありません。

14. 2026年の研究:大規模化、生成モデル、ロボティクス

DUSt3RからVGGTへとつながる研究は、2026年にも発展を続けています。

14.1 VGG-T³:大量画像への対応

CVPR 2026のVGG-T³は、大量の画像を扱うときに問題になるTransformerの計算量やメモリ消費を改善する研究です。[19] 1,000枚規模の画像集合を扱うfeed-forward reconstructionを研究しています。DUSt3Rから始まった、画像から直接3Dを推定する考え方を、大規模な画像集合へ拡張する方向です。

14.2 Gen3R:3D再構築と生成モデルの統合

Gen3Rは、VGGTのgeometry representationとvideo diffusion modelを組み合わせる研究です。[20] 「geometry foundation model + generative model」という枠組みにより、単に観測された画像から3Dを復元するだけでなく、3D reconstructionと3D generationを結びつける方向です。

14.3 ロボティクスとVLAへの応用

ロボティクスでも、Geometric Foundation Modelを活用する方向が研究されています。2026年には、VGGTのようなモデルをVision-Language-Action(VLA)モデルへ組み込む研究も報告されています。[21] VLMやVLAが苦手とする正確な3D幾何を、Geometric Foundation Modelに担当させるという考え方が重要になります。ただし、こうした応用はまだ研究段階です。

15. 古典的な幾何学は不要になるのか

ここで注意したいのは、DUSt3Rによって古典的な幾何学が不要になったわけではないという点です。DUSt3Rの成功は、geometryをneural networkへ単純に置き換えたということではありません。むしろ、次のような組み合わせが重要になっています。

[learned geometric prior] + [classical geometric optimization]

例えば、VGGTでは、ネットワークが予測したcameraやpointをそのまま使うだけでなく、Bundle Adjustmentによって最適化する機能も公式に提供されています。[17]

実世界の3D再構築には、高解像度画像、非常に長い画像シーケンス、未知のカメラ、反射物体や透明物体、動的物体、学習時のデータ分布から外れたシーンなど、まださまざまな課題があります。2026年のレビューでも、DUSt3R系の手法は従来のSfMやMVSを完全に置き換えたというより、精度、スケーラビリティ、動的シーンなどを含めて、まだ発展中の技術として整理されています。[2]

航空写真を対象とした比較研究でも、DUSt3R、MASt3R、VGGTは極端に疎なviewでは強みを示す一方、大規模・高解像度条件などでは従来法を完全に置き換えるわけではない、という結果が報告されています。[22] そのため、現在の3D Visionでは、学習による3D推定と古典的な幾何学的最適化を組み合わせることが重要です。

16. DUSt3Rを中心とした研究の系譜

ここまでの研究の流れを一つの図にまとめると、次のようになります。

           Classical 3D Vision
                    │
      matching → pose → triangulation
                    │
          bundle adjustment → MVS
                    │
           ┌────────┴────────┐
           ↓                 ↓
    learned matching     learned depth
   SuperGlue / LoFTR     MVSNet / DPT
           │                 │
           └────────┬────────┘
                    ↓
             CroCo / CroCo v2
          cross-view Transformer
                    │
                    ↓
              ┌── DUSt3R ──┐
              │  pointmap  │
              │ regression │
              └─────┬──────┘
                    │
           ┌────────┴──────────┐
           ↓                   ↓
        MASt3R           CUT3R / Spann3R
    matching + 3D         spatial memory
           │                   │
           ↓                   ↓
     MASt3R-SLAM            online 3D
           │
           ├────── Fast3R / MUSt3R
           │         multi-view
           │
           └──────────┐
                      ↓
                  VGGT etc.
          Geometric Foundation Model
                      │
             ┌────────┼─────────┐
             ↓        ↓         ↓
            SLAM     3DGS     Robotics
                     NeRF       VLA

この図では、DUSt3Rが従来の3D VisionとGeometric Foundation Modelを結びつける位置にあることが分かります。

従来の研究では、matching、depth、poseなどの個別の問題に対して、それぞれニューラルネットワークを導入する方向が中心でした。DUSt3Rでは、まず画像からpointmapという汎用的な3D表現を予測し、そこから必要な情報を導出する方法へ変化しました。そして、その考え方がMASt3R、Fast3R、CUT3R、MUSt3R、VGGTなどの研究へと発展しました。

17. まとめ:DUSt3Rの位置づけ

DUSt3Rは、3D Vision版のFoundation Modelという考え方を成立させるうえで、重要な転換点となった研究として位置づけられます。

DUSt3R以前にも、ニューラルネットワークを利用する3D Vision技術は数多く存在しました。しかし、その多くは、stereo、depth、matching、poseなど、個別の問題をニューラルネットワークで解く方法でした。

DUSt3Rは、これに対して異なる問題設定を提案しました。まず画像から汎用的な3D表現であるpointmapを推定し、depth、pose、matchingなどはそこから導出します。これは、3D Visionの処理を個別のアルゴリズムの組み合わせとして考える方法から、3D空間そのものを推論するモデルとして考える方法への転換です。

  • 2024年:DUSt3Rによるpointmapを中心とした3D推定
  • 2024〜2025年:MASt3R、Fast3R、CUT3R、MUSt3Rなどによるmatching、multi-view、streamingへの拡張
  • 2025年:VGGTによるGeometric Foundation Modelの発展
  • 2026年:大規模な3D再構築、SLAM、生成モデル、ロボティクスへの統合

このように見ると、DUSt3Rの考え方は一時的な手法ではなく、一つの研究パラダイムになったと考えられます。2026年のサーベイでも、「From DUSt3R to VGGT and beyond」という流れで、この研究領域が整理されています。[2]

画像からの点群作成、3Dモデル構築、特徴点マッチング、差分検知などに興味がある場合、DUSt3Rは、現在の3D Vision技術がどのように発展してきたのかを理解するための重要な研究です。そして今後も、学習によって得られる3Dの幾何情報と、従来の幾何学的な最適化をどのように組み合わせるかが、重要なテーマになると考えられます。


参考文献

[1] S. Wang et al., “DUSt3R: Geometric 3D Vision Made Easy,” Proceedings of the IEEE/CVF Conference on Computer Vision and Pattern Recognition (CVPR), 2024. https://openaccess.thecvf.com/content/CVPR2024/html/Wang_DUSt3R_Geometric_3D_Vision_Made_Easy_CVPR_2024_paper.html

[2] “From DUSt3R to VGGT and Beyond: A Survey on Feed-Forward 3D Reconstruction,” 2026. https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2096579626000203

[3] J. L. Schönberger et al., COLMAP Documentation. https://colmap.github.io/

[4] Y. Yao et al., “MVSNet: Depth Inference for Unstructured Multi-view Stereo,” Proceedings of the European Conference on Computer Vision (ECCV), 2018. https://openaccess.thecvf.com/content_ECCV_2018/html/Yao_Yao_MVSNet_Depth_Inference_ECCV_2018_paper.html

[5] P.-E. Sarlin et al., “SuperGlue: Learning Feature Matching with Graph Neural Networks,” Proceedings of the IEEE/CVF Conference on Computer Vision and Pattern Recognition (CVPR), 2020. https://openaccess.thecvf.com/content_CVPR_2020/html/Sarlin_SuperGlue_Learning_Feature_Matching_With_Graph_Neural_Networks_CVPR_2020_paper.html

[6] J. Sun et al., “LoFTR: Detector-Free Local Feature Matching with Transformers,” Proceedings of the IEEE/CVF Conference on Computer Vision and Pattern Recognition (CVPR), 2021. https://openaccess.thecvf.com/content_CVPR_2021/html/Sun_LoFTR_Detector-Free_Local_Feature_Matching_With_Transformers_CVPR_2021_paper.html

[7] P. Weinzaepfel et al., “CroCo v2: Improved Cross-view Completion Pre-training for Stereo Matching and Optical Flow,” Proceedings of the IEEE/CVF International Conference on Computer Vision (ICCV), 2023. https://openaccess.thecvf.com/content_ICCV_2023/html/Weinzaepfel_CroCo_v2_Improved_Cross-view_Completion_Pre-training_for_Stereo_Matching_and_ICCV_2023_paper.html

[8] R. Ranftl et al., “Vision Transformers for Dense Prediction,” Proceedings of the IEEE/CVF International Conference on Computer Vision (ICCV), 2021. https://openaccess.thecvf.com/content_ICCV_2021/html/Ranftl_Vision_Transformers_for_Dense_Prediction_ICCV_2021_paper.html

[9] V. Leroy et al., “MASt3R: Grounding Image Matching in 3D with MASt3R,” 2024. https://arxiv.org/abs/2406.09756

[10] K. Murai et al., “MASt3R-SLAM: Real-Time Dense SLAM with 3D Reconstruction Priors,” Proceedings of the IEEE/CVF Conference on Computer Vision and Pattern Recognition (CVPR), 2025. https://openaccess.thecvf.com/content/CVPR2025/html/Murai_MASt3R-SLAM_Real-Time_Dense_SLAM_with_3D_Reconstruction_Priors_CVPR_2025_paper.html

[11] “SLAM3R,” Proceedings of the IEEE/CVF Conference on Computer Vision and Pattern Recognition (CVPR), 2025. https://mlanthology.org/cvpr/2025/liu2025cvpr-slam3r/

[12] “Fast3R: Towards 3D Reconstruction of 1000+ Images in One Forward Pass,” Proceedings of the IEEE/CVF Conference on Computer Vision and Pattern Recognition (CVPR), 2025. https://openaccess.thecvf.com/content/CVPR2025/html/Yang_Fast3R_Towards_3D_Reconstruction_of_1000_Images_in_One_Forward_CVPR_2025_paper.html

[13] “MUSt3R: Multi-view Network for Stereo 3D Reconstruction,” Proceedings of the IEEE/CVF Conference on Computer Vision and Pattern Recognition (CVPR), 2025. https://openaccess.thecvf.com/content/CVPR2025/html/Cabon_MUSt3R_Multi-view_Network_for_Stereo_3D_Reconstruction_CVPR_2025_paper.html

[14] “Continuous 3D Perception Model with Persistent State,” Proceedings of the IEEE/CVF Conference on Computer Vision and Pattern Recognition (CVPR), 2025. https://openaccess.thecvf.com/content/CVPR2025/html/Wang_Continuous_3D_Perception_Model_with_Persistent_State_CVPR_2025_paper.html

[15] “VGGT: Visual Geometry Grounded Transformer,” Proceedings of the IEEE/CVF Conference on Computer Vision and Pattern Recognition (CVPR), 2025. https://openaccess.thecvf.com/content/CVPR2025/html/Wang_VGGT_Visual_Geometry_Grounded_Transformer_CVPR_2025_paper.html

[16] VGGT Project Page. https://vgg-t.github.io/

[17] Meta Research, VGGT Official Repository. https://github.com/facebookresearch/vggt

[18] NVIDIA Research, InstantSplat Official Repository. https://github.com/NVlabs/InstantSplat

[19] “VGG-T³: Offline Feed-Forward 3D Reconstruction at Scale,” Proceedings of the IEEE/CVF Conference on Computer Vision and Pattern Recognition (CVPR), 2026. https://openaccess.thecvf.com/content/CVPR2026/html/Elflein_VGG-T3_Offline_Feed-Forward_3D_Reconstruction_at_Scale_CVPR_2026_paper.html

[20] “Gen3R: 3D Scene Generation Meets Feed-Forward Reconstruction,” Proceedings of the IEEE/CVF Conference on Computer Vision and Pattern Recognition (CVPR), 2026. https://openaccess.thecvf.com/content/CVPR2026/html/Huang_Gen3R_3D_Scene_Generation_Meets_Feed-Forward_Reconstruction_CVPR_2026_paper.html

[21] Geometric Foundation ModelとVision-Language-Actionモデルの統合に関する研究, arXiv, 2026. https://arxiv.org/abs/2605.24642

[22] 航空写真におけるDUSt3R・MASt3R・VGGTなどの比較研究, arXiv, 2025. https://arxiv.org/abs/2507.14798